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このページは株式会社TOMMY WALKERが管理運営するシルバーレイン、エンドブレイカーにて活動中のキャラクターに関するブログです。ゲームの内容をご存知でない方、興味がない方はお戻りください。
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 下駄箱にあった手紙に指示されて、やってきた校舎裏。淵叢は産まれて始めての体験をしていた。

「好きです! 付き合ってくださいっ」

真剣な表情で、思いの丈を伝えてきた人物を信じられない思いでまじまじと見つめた。

――なんで私を。

目の前の人物に見覚えは無い。

小柄な部類だろう。顔の割に目が大きく、髪はさらさらとシルクのようだ。カッコイイよりも断然可愛いと言われる部類の人物だろう。

先ほど真っ先に自己紹介された情報を信じるならば二年後輩というから、高校一年生だ。能力者の大半がそうであるように、淵叢もそれほど社交的な人間ではない。結社やクラスが同じでない人間と親しくした覚えは無いのだが。

「どうして私なの? 小阪さんだっけ。貴方と話した記憶もないんだけど」
「ずっと、見てました。カッコいい人だなって」

まったく気付かなかった。戦闘者の常として敵意には敏感だが、そういう艶っぽい視線など受けるとは思っていなかったのだから仕方ない。

疑問は尽きないが、今やるべきことは別にあった。

「ごめんなさい。無理よ」

一刀両断、出来るだけ誤解や希望をあたえないようばっさりと切り捨てた。

見る見るうちに相手はその大きな瞳に涙を滲ませた。

「無理って……どうして、どうしてですか! せめて理由を教えてください!」
「いやだって、貴方女の子だし」

校舎裏に冷たい風が吹きぬけた。




青天の霹靂から一日たっていた。

『貧乏人の巣窟銃道商店』と木の板に毛筆で書かれた教室の仲で、淵叢雹は昨日起こった事をほぼ洗いざらい相棒であり、結社の現団長である漣雨水に話していた。

「付き合ってしまえばよかったじゃないですか」
「冗談言わないでよ。大体相手は女性よ」

にべも無かった。漣は団長用の椅子に腰掛け机に突っ伏して眠たげだ。多少変則的とはいえ色恋の話しなど、あまり興味もないのだろう。

「同性愛者なんて銀誓では珍しくもないでしょう? ウチの八百屋さんだってそっちのケですし」

事実だった。

銀誓館学園は、というか能力者たちは軒並み恋愛というものに対してタブー意識が低い。

明日とも知れぬわが身なら、という事だろうか。好意を持ったら一直線に行動し、同性だろうが歳の差がいくらあろうがお構いなく恋愛関係を結ぶ者が多い。

学園側もそれを規制する気はまったく無く、むしろ推奨しているようだ。学園祭や運動会といった学校ではお決まりの行事だけでなく、クリスマスやバレンタインといったイベントまでも大掛かりに祝い、盛り上げ、カップルを作るのに一役買っている。

淵叢はそういった動きを否定するつもりは無い。死にたくは無いが、死なない保障などどこにもないのだ。ならばせめて生きているうちに楽しいことを目一 杯……前線に出て一緒に戦えない大人たちのせめてもの慰めなのかもしれない。薬や酒に逃避するよりもよほど健全でもあるわけだから。

「彼女にそれ言ったら怒るだろうからやめときなさいね。彼女は同性愛者なんじゃなくて好きになった相手がたまたま同性だっただけよ」
「それはマイノリティな人たちがよく使う詭弁でしょう。結果としてはズーレーなんですから」
「それもそうだけどって、違うわよ。今は八百屋の事じゃなくて昨日の彼女の事よ」
「断ったんでしょう?」
「それで済んでるなら相談なんてしないわよ。巻いてくるのに苦労したんだから」
「はい? 話しが見えないのですが」

ようやく興味が湧いて来たのか、漣が伏せていた顔を上げた。

「なんて言うのかしら、えーとスモーカー?」
「それはうちのフケ顔行方不明野郎ですよ。もしかしてストーカーですか?」

フケ顔行方不明野郎とは、この結社の元団長、一本槍風太の事だ。ある日唐突に顔を見せなくなった男、結社どころか学園にすら登校していない。

どこぞでのたれ死んだか、それとも初代団長のようにカニ工船に乗せられたのか。行方はようとして知れない。が、特に彼らも心配しているわけでもない。銀誓という学園はふっつりと音信不通になっておきながら、ある日ひょっこり戻ってくる人間が腐るほどいた。

「そう、それよ。今日一日ずっと張り付かれてね」
「どうにか出来なかったんですか?」
「相手は曲がりなりにも能力者よ? しかもレベルだけで見れば、私たちと同じくらいの。そう簡単にどうこうは出来無いわよ」
「いや、行き成り実力行使しろなんていってませんが。話し合って付きまとわないように説得するとか」
「もうやったわよ。それでどうにも成らないから雨水に相談してるんでしょ」
「ふーむ、どうしたものですかねぇ」

二人そろって唸っていると、スパーンと勢いよく結社の扉が開いた。

「話しは全部聞かせてもらったわ!」

扉の向こうには両手を腰に当て無駄に偉そうに八百屋タマキが立っていた。

「おや、八百屋さん。こんにちは」
「こんにちは、団長。とりあえず一発殴らせなさい」
「うえ、聞いてました?」
「全部って言ったでしょ。大丈夫。痛くしないから」
「ちょっ、助け」

現実は非情であった。漣は八百屋の問答無用のレバーブローを食らい轟沈した。まさに瞬撃、目にも留まらぬ早業である。

口元から半分魂が抜け出ているような漣は無視して、八百屋が先ほどの狂態が嘘のように向き直った。

「で、まぁ人生経験豊富な私から言える事は一つね。貴方たち、付き合っちゃいなさい」
「ええと、八百屋? なに言ってるの」

どこから突っ込めば良いのか。

人生経験豊富って、私より年下じゃない。1つだけだけど。てか付き合うって誰と誰がだ? もしかしてもしかしなくてもそこで伸びてる似非紳士の事だろうか。

「こういう場合、相手があきらめ切れない理由ってのは、フリーなのに付きあえないっていう事、それに尽きるのよ」

したり顔で言ってのける八百屋に理解できない、と首を振った。

「なにを勝手な。付き合っている人間が居ないからって、付き合う理由にはならないでしょうに」
「恋する人間ってのに理屈は通じないの。だ、か、ら、あんたたちが付き合っちゃえば、もう淵叢の恋人っていう椅子に空きは有りませんよってアピールできるのよ。そうすればたぶんその子も諦めるんじゃない?」

納得はできないが、なんとなく筋道は立っているように感じられた。

「そんなものかしらねぇ」
「そんなものよ。少なくとも私の愛読してる漫画にはそうあったわ」
「漫画?」
「いや、なんでも無いわよ。うん」

口笛を吹く八百屋はどこまでも胡散臭い。が、他にいい案がないのも確かだった。
――これが藁をも掴むっていう心境なのかしらね。
どれ程当てになら無そうでも何もしないよりはましだろうと、淵叢は死にかけの相棒を蘇生にかかった。




一週間たった。

学園からの帰り道、最近の日課となっている漣と一緒の下校中。

「居る?」
「居ますねぇ。後ろにぴーったり。すっぽんみたいにくっついて来てますよ」

漣が目線で促す方向へ視線をやれば、確かに女生徒が一人、電柱の影なんてベタな場所に張り付いていた。

「そろそろ一週間よね」
「ですね。諦めないじゃないですか」
「どうしたものかしらねぇ」

わざわざ男と一緒に下校なんて、噂好きな連中の的になるような事をしたのにこれではあんまりだ。




次の日、結社に顔をだすと漣がさも名案が浮かんだとばかりに手を叩いた。

「脅してもらうってのはどうでしょう」
「どういうこと?」
「そこで土下座してるフケ顔スモーカーですよ。彼に謝罪がてらちょっと働いてもらいましょう」
「ああ、そういうことね」

彼の視線の先には、妙にすすけた格好をした男が小さくなっていた。格好は日本の芸術ともいえる謝罪方法、ドゲザだ。

随分と小汚くなってはいるが、先日話題に上がった男、一本槍風太に違いなかった。

「まさか、団長業務を押し付けて行方くらませてた”元”団長さんは断りませんよねぇ」
「誠心誠意努力させていただきます」




作戦は簡単。5分もしないうちに作戦立てると早速行動に移した。

校舎裏からドスの聞いた一本槍の声が聞こえる。

「ようようねぇちゃん。あんただよな、ウチのツレを付けまわしてるのは。やめてくんねぇかなぁ」

一本槍に、淵叢の件で話がある、とくだんの少女を呼び出して脅し、もとい説得をしてもらっている最中だ。

観察場所は植え込みの影。漣と2人して自身の持てるスキルをフル活用して穏行してパパラッチもどきをしている。

「いい感じね。おもいっきり怯えてるわ」
「雹、鬼ですね。仮にも下級生の女子ですよ」
「言いだしっぺは雨水でしょ。大体付きまとわれた被害者は私よ? 今更同情はしないわ」
「女って、怖いですねぇ」
「うるさい」

やれやれ、なんてアメリカンな動作で呆れている相棒の事は放って置く。取りあえずは向こうの様子を見守るのが第一だ。

「いいか? もうあいつらに付きまとうんじゃねえぞ? 次に同じことしたら歌舞伎町に沈めっからな?」

それにしてもこの一本槍、ノリノリである。

まるで本業のヤーさんのように少女を脅す言葉に力が入っている。これは思いつきの作戦のわりに上手くいくかもしれない。

「なんだ、何ぶつぶつ言ってやがる。はっきり物いいやがれ」
「わ、わ、私とお姉さまの邪魔をするな! このクサレヤクザー!」

と、思っていた矢先にこれである。

「おや、フルボッコですね」
「風太、神秘攻撃には弱いから」
「神秘攻撃って、今思いっきりボディブローしてるように見えましたが?」
「握ってるのは蟲笛でしょ。れっきとした神秘攻撃よ」
「警棒よろしくそれで殴りまくってる姿には、とても神秘型の攻撃には見えませんけどねぇ」

もはや作戦は瓦解した。淵叢はすっぱりと脅迫作戦を破棄し、今まさに眼前で繰り広げられている残酷グリム童話ばりの喜劇を観戦することにする。

「いたっごめんなさい。もうしません許して」
「どっかいっちゃえー!」

少女の気合いと共に、一回りは大きいはずの一本槍がふっとぶ。

「おーおー、派手に吹っ飛びましたねぇ」
「場外ホームランって所かしらね」

青空に一本槍が笑顔でサムズアップをした姿を幻視。しょうがないので両手を合わせて拝んでおいた。




次の案を考える為に結社へと帰還。

「で、元団長が殉職してしまったわけですが、どうしたものでしょうか」
「どうしたもんかしらねぇ」
「恋する乙女を甘く見たわね」
「おや、いたんですか八百屋さん」
「難儀してるって話しを聞いてね。演劇部の練習ほっぽって駆けつけてあげたわ。感謝しなさい」
「誰も頼んでませんが。っていうか、偉そうな事言って貴方の作戦も失敗してるじゃないですか」
「私の作戦が失敗するわけないじゃない。問題は貴方たちの偽装が下手だからよ」
「出来るだけ一緒に居ますが」
「それだけで恋人なんて思うわけ無いじゃない。よく言うでしょ、恋は盲目って。フィルターがかかった彼女の目には多少仲のいい友達くらいにしか映らないんじゃない? 邪魔だなこの眼鏡、くらいには思ってるでしょうけど」
「じゃあどうすればいいのよ」

そもそも最初の案を出したのは八百屋なのだ。ついつい恨みがましい視線になってしまっても仕方ないだろう。

「それはもう、二人のアツアツっぷりを見せ付けるしか無いわね」
「アツアツ、ですか?」
「そ。とりあえず貴方たち彼女の前でキスの一つでもしてみたら?」
「き、キス!? いやいや、なにいってやがんだこのやろう」

唐突な提案に漣が思いっきり動揺する。かなりテンパッているのか、いつもの似非紳士っぽい口調が砕けてチンピラっぽくなっている。

「雨水、落ち着きなさい」
「雹、お前も落ち着きはらってないでなんかいいやがれ!」
「落ち着きなさいっての」

漣をチョップでもって沈める。力が妙に入ってしまったのを自覚する。どうやら動揺しているのは彼だけではないらしい。

「で、キスってのはなんで?」
「恋人同士の熱愛っぷりを見せ付けるのには、公衆の面前でのキスが一番手堅くてお手軽だからよ。それとも、貴方たち二人で手をつないでキャッキャッウフフなラブラブトークとかしたい?」
「謹んで遠慮させていただくわ」
「でしょ? それに比べたら、マウストゥーマウスくらい簡単なものよ。ちょっと顔近づけて、はい終わり。ね、簡単でしょ?」
「それなら実際にやらなくてもいいかもね」

僅かな希望に縋る自分を誰が責められるだろうか。

「何を弱気なことを。フリじゃどうせ気付かれるわよ。相手はこっちのことをガン見してるのよ? ハリウッドスターばりの演技力でもない限り見破られるわ。ここは一発、覚悟を決めてぶちゅーっとやらなきゃ」
「なんか、妙に熱心ね。貴方」
「ヤーネーソンナコトナイワヨ」
「わかりやすい誤魔化しありがとう。……でもそうね、癪だけど確かにそうするのが一番手っ取り早いかもしれないわ」

漣、むくりと起き上がって。

「いや、雹? なんか女同士で話し進めちゃってるみたいだけど、俺の意見は?」
「聞く必要ないわね」
「ひでぇ。今、全俺が泣いた」
「勝手に泣いてなさい」

野郎に人権などない。特にこの男には。




また一緒に下校しながら後ろを確認する。

居た。

あいも変わらず、ぴったりとバレバレな尾行を続けていた。

「ほ、本当にやるのかよ」

漣は妙におどおどしている。こういった時に肝が据わるのが早いのはやはり女性なのだと再認識。

「今更ぐだぐだ言わない。ほら、こっち向きなさいよ」

お互い頭突きをするような勢いで口付ける。

ファーストキスはレモンの味とかいったのはどこの阿呆だろう。レモンどころか血の味だ。ヘモグロビンやらなんやら、さっぱりロマンの欠片もない。

「お、お姉さまが汚されたー!」

一部始終を見ていたのか、尾行者が土煙を立てて走り去っていった。作戦は成功、か。

「いや、どっちかってぇと被害者は俺なんだけど」
「黙りなさい」

顔が熱いのは気づかないようにする。というか、そう意識した時点でもう気づいていて後の祭りだ。などと思考が空回りする。クールに装っていても所詮10代の女か、と冷静な自分がコメントを残してくれました。




次の日、漣と2人だらだらと登校する。 

「やれやれ、これでやっと恋人役ともおさらばですね」
「そうね」
「おや、なんでしょう。掲示板の前に人だかりが」
「またなんか銀スポ(銀誓学園スポーツ新聞の略)が適当なネタでっちあげてるんでしょう」
「……雹、この流れ、私には死亡フラグしか立ってないように思われるのですがそこんところどうでしょう」
「言われてみればそうね。ちょっと確認してみましょう」

掲示板に張り出された紙面を覗き込む。
でかでかとキスシーンのアップが載っており、それにあること無いこと記者のコメントが付いている。

「は、はめられた」
「ふふ、ふふふふふ」
「どどどどど、どうしました雹」
「犯人の目星はついてるわ。少しお灸が必要なようね」


八百屋の笑い声と地獄の底から響いてくるような淵叢の声で〆


ギャグ難しいよギャグ。そんなこんなで走り書きギャグ。地の文が少ないやら適当なのは、元々会話文のみで構成されたチラシの裏だったのでお察しください。
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