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本日のスレで出ていたオズ話の個別ストーリー的なもの。
しっかりオズの魔法使いを読んだ記憶がないので、オリジナルのようなものである。

ある国に王様がおりました。
その王様は元は乞食でしたが、ありとあらゆる手を使って成り上がり、人を泣かせ、不幸にし、ついには前の王様を殺してその地位を手に入れました。

沢山の人を泣かせる悪い王様です。けれども彼の心には誰かを虐める喜びも、王様になれたという喜びもありませんでした。
どんなに美味しい料理を食べても美味しくなく
どんなに美しい女性を侍らしても嬉しくなく
どんなに面白い劇を見ても楽しくない

王様は気がつきます。自分に心が存在しないことに。何故王様になりたかったのか思い出せないことに。

人を騙して落としいれ、沢山泣かせる中で王様は人の心を失ってしまっていたのでした。

 

そんな時、王様の国に一匹の犬を連れた少女がやってきました。
迷い人だと言うその少女は、故郷を見つける為にお城に沢山ある本を見せてくれというのです。

全てがどうでもよくなっていた王様は二つ返事で了解しました。

少女は喜んで本を読みはじめました。
1日たち、2日たち、そして1週間が過ぎましたが、結局故郷への手がかりは見つかりませんでした。

少女は見ている方が残念だと思ってしまうほどにガッカリしてしまいます。

コロコロと表情の変わる少女に疑問をもった王様は問いました。

「何故そんなに喜ぶのか。何故そんなに悲しむのか」
少女は答えます。
「心がそうなるから喜ぶんだよ。悲しむんだよ」


手がかりはここに無かったと悟った少女は城を後にしました。その隣に悪い王様、今では元王様を伴って。

「どうして付いてくるの?」
「貴方の側に居れば、私の心が見つかるような気がするのです」
「お城はほうっておいて大丈夫なの?」
「なに、王など誰かが勝手にやりますよ」
「そういうものなの?」
「そういうものです」
「ふぅん。じゃ、これからよろしくね。私、テン」
「私はムシュと申します。今後ともよろしく」

二人と一匹はそれぞれの求めるものの手がかりを探しに次の都へ向かいます。
 

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